大涌谷は、箱根の最高峰神山の北西に広がる約10万平方米の傾斜地で、 標高は800~1,070m、その70%が噴蒸熱源地帯であり放熱量は1×10⁷Kcal/secといわれています。 しかしこの地域より自然に湧出する温泉は少なく、もともと(大正時代~昭和10年頃)は、湧水・降水を利用し造成したものが 大半であり季節、天候に大きく左右され一定量を供給することが大変難しい時代でした。
その後、箱根温泉供給(株)が設立され(昭和5年9月17日)、同時に大涌谷に噴出する多くの蒸気(火山性ガス)を 有効的に利用できるように、仙石原イタリ湿原地帯(現・箱根カントリー倶楽部地内)に温泉用水を求め、 大涌谷まで高低差350m、総延長2600mの鋼管を布設しポンプ動力として大型ディーゼルエンジンを使用、 大涌谷までの間に三つの貯水池の建設という膨大な計画を打ち出しました。
そして、揚水工事と同時に温泉に恵まれていなかった奥箱根の広大な地域への送湯管(総延長14,500m)工事も進められました。 そして、約6年の歳月を費やし、何とか完成に至りました。 それから、現在までに随時施設を改修・増強し揚水能力も日量最大5,000㎥となり、 大涌谷現地の整備、各方面への送湯管の保温化などが進められております。
大涌谷は、当初より蒸気を利用して温泉を造成しております。ところで、”温泉”とは何か?法律上の定義は”こちら”をご覧下さい。
仙石原イタリ湿原に数本の水井戸があり、くみ上げられた温泉用水は、 イタリ湿原に位置する通称“イタリ池”(60,000㎥)にいったん貯められます。
イタリ池に貯められた水は、隣接する“マイクロストレーナー”という装置で浮遊物質を除去します。 “マイクロストレーナー”は、温泉用水中に含まれる浮遊物質をマイクロ網(孔径約40μm)を通すことにより 浮遊物質の除去を目的とした物理的処理を行う装置です。
マイクロストレーナーによって処理された温泉用水は、 4箇所のポンプ場を経て総延長2,961m、高低差350.80mの大涌谷山頂の3号貯水池と2号貯水池へいったん貯められます。 詳しい揚水系統図は、“こちら”をご覧下さい。
2・3号貯水池にそれぞれ貯められた温泉用水は、毎朝、その日に使用する温泉の総量分だけバルブを開き 大涌谷の現地に送られます。大涌谷の現地では各造成装置に温泉用水を振り分けます。 大涌谷温泉は、酸性が強くそして硫黄分が多いため、水道メーターのような機械的なメーターが使用出来ず、 三角に切り込みの入った堰から流れ落ちる高さを量りだし、流量に換算する方法を創立当初より使用しています。
振り分けられた温泉用水は、造成装置で高温の蒸気と混ざり合い多種の成分を含んだ温泉に変わります。 造成装置は、大きく分けて2種類ありタンク型と塔型に分かれます。タンク型は、タンクに溜まった水に上から 高温の蒸気(火山性ガス)を吹き付けることによって、温泉が出来上がります。詳しい構造は、“こちら”をご覧下さい。
塔型は、下から蒸気(火山性ガス)を入れ、上から水を入れ途中の隔板によって拡散された水と高温の蒸気が混ざり合い温泉が出来ます。 詳しい構造は、“こちら”をどうぞ。
出来上がった温泉は、大涌谷で自然に湧き出る自噴温泉(当社の総湯量の約30%)と混合され、再度温度調節のため各造成装置の温泉用水の配分が調整されます。 各起点では、火山ガス(硫化水素ガスや二酸化硫黄ガス)と温度、量の最終的チェックを行い、各方面へ送り出されます。
各地域では、いくつもの支線に別れますので、各支線の調整及び供給先の調整を毎日係員が行います。
大涌谷の造成装置や送湯管は、硫黄や湯の花が一晩で付着してしまうため、 毎日そういったものの除去作業を行わなければなりません。 そして、作業現場は火山ガス濃度が非常に高いため作業員は、防毒マスクを必ず着用し作業にあたります。 写真は、造成槽噴気管の硫黄除去作業。
造成装置からの配管(直径150mm~200mm)も、場所によっては半日で詰まってしまいます。 そこで、1日2回竹を割って数十mつないだ掃除用具(払い棒)で、管内を掃除します。
造成塔内も、壁面に硫黄が大量に付着します。これは、外側から叩いて衝撃で落とし、掃除窓よりかき出します。 造成塔は、7箇所ありそれぞれの硫黄の付き具合によって、週に1~3回位の割合で作業します。